7:30。爆音で下のベッドから鳴り響くアラームに叩き起こされる。一部屋に4人、2台の2段ベッドで暮らす近年稀に見る共同生活も8年目となれば、新入寮生を迎え入れたばかりのこの時期にはこういったことも想定の範囲内だ。慌てず二度寝を決め込んだ。
10時半に寝床からなんとか抜け出て1日を始める。昨日までは8時までには起きていたが、昨夜の夜ふかしの影響で今日は比較的遅くに起きた。11時に部屋の住人たちと新しい冷蔵庫を設置する約束をしていたので、それまでに体を覚醒させ作業に取り掛かる。
新しく部屋に入ってきた人がそこそこの大きさの冷蔵庫を持ってきていて、部屋の共用物にして良いとのことだったので、今日はその設置を行なった。部屋で自炊をする人数が増え以前の冷蔵庫が手狭になってきていたのでとても嬉しい。廊下から電源をひき、部屋の前を片付け、冷蔵庫の扉の開閉方向を変えて無事設置が完了した。これが新しい部屋のメンバーでの初の共同作業となった。午前中から一仕事こなし充実感が体を満たした。
昨日作った鶏ハムを切り分けてお昼ご飯にいただく。昨日食べた分よりより美味しく感じられてなんだかとても嬉しくなった。自分で作ったものを自分で食べると、どうしようもなく存在する自分の体というものをどこか介護のように世話している気がしてあまり好きではない(ので手を抜きがちになる)のだが、今日の料理は美味しさがそれを打ち消してくれた。自分という存在を自分自身がきちんと責任を持って支えているのだという自負が湧いてきて、少しだけ自分のことが好きになれた気がした。
午後からは、寮内向けのWebアプリの開発会議に参加した。現状の問題点と今後の実装方針や仕様について確認を行い、各自作業をする。3時間ほど集中して作業に取り組めた。作業には一定の進捗が生まれたし、そもそも集中して作業をするのはそれ自体が快感だ。今後のやるべきことも明確になり、作業への意欲が高まり更なる充実感に包まれた。
18:00。しばらく前から、談話室の麻雀卓で役満を和了った人にご飯を奢るということ(通称、役満ラーメン)をしており、今日は春休み中に役満を和了った二人と共に、以前から行きたかった福仙楼に向かった。実際のところ普段はなかなか行けないお店に行って美味しいご飯を食べ、後輩たちと楽しくおしゃべりできるので、彼ら以上に僕自身がこの会を楽しんでいると思う。本来ならば和了った人たちの希望でご飯を決めるべきかもしれないが、いつも自分で行きたい店(ラーメン屋)を指定してしまう。みんな人がいいので素直についてきてくれて本当にありがたい。
3年ぶりくらいに食べた福仙楼スペシャルは本当に美味しかった。ほろほろになったスジ肉が舌の上にジューシーな味わいを生み出し、甘さを感じるほどの旨味が口一杯に広がる。スープは二郎系などに比べて脂っこすぎず、どこか中華の趣を感じられ、しかししっかりと豚骨の出汁が効いており、程よく入ったニンニクと共に更なる食欲を喚起させる。その香りと旨味に誘われるままに次々と麺を啜り野菜と肉を噛み締めているといつの間にか具材がなくなってしまい、そのままの勢いでスープまで完飲してしまった。今日はチートデイということにしておこう。言い訳とばかりに買っておいた胃薬とトクホの黒烏龍茶を飲み干した。
帰り際、腹ごなしに歩きませんかと提案してもらったので3人でゆっくりと帰り道を辿る。4回生・6回生・8回生の組み合わせでみんなこれまでの大学生活が全て順風満帆思い通りというわけでもなかったので、紆余曲折ある各々のこれまでの話や定番の受験の話をした。うまくいかないこともたくさんあるけれど、こうして明るく振り返ることができるのなら少しは救われた気持ちになる。
歩いて寮に戻りしばらく休憩を入れた後、福仙楼に行ったのと同じメンバーで銭湯へ。定期的にある寮のシャワーの不具合で、今回は一定以上の人数が同時にシャワーを使うと温水の勢いが著しく弱くなるという状態に陥っておりとても寮のシャワーでは体と心を清めることなどできないので、更なる幸福を求めて桜湯に向かった。幸いにも桜湯は空いており、とてもリラックスしてお湯に浸かることができた。自由に温水を浴びて湯船に浸かれるということは本当に素晴らしいことだ。この境遇が当たり前に手に入る身分になりたい。寮のシャワーへの愚痴や明日以降もそれに耐えなければならない不遇さについて盛り上がりつつ帰路についた。
今日という日は本当に美しい一日だった。死ぬ間際に思い出しても決して後悔しないくらい素晴らしい日。大学や仕事がなければ、自分のリソースをただその日の生活そのもの向けることができ、とても充実した日々が送れるのに。それでも、美しい思い出があればままならない日々も少しは前を向いて生きていけるかもしれない。